はじめに

日本国内に住所を有する20歳以上60歳未満の外国人の方は、

国民年金に加入する必要があります。

(外国人の方が国民年金加入の手続をする必要があります)

ただし、法人(株式会社など)に勤務している正社員の外国人の方や

常時5人以上の従業員を使用している一定の個人事業等で正社員として

働く外国人の方は、国民年金ではなく厚生年金に加入する必要があります。

(会社が厚生年金加入の手続をする必要があります)

※株式会社などの法人の場合は、従業員が5人未満でも厚生年金へ

  加入しなければなりません。

 

保険料(外国人の方が負担するもの)

国民年金の保険料は、全額、外国人の方の負担で、平成28年度は月額16,260円です。

厚生年金の保険料は、会社と外国人の方がそれぞれ半分の金額を負担し、外国人の

方が負担する金額は、給料の額に応じて、月額約9,000円〜約56,000円(平成28年度)と

なっており、毎月給料から控除されることになっています。

(会社からもらう給料明細の控除欄に「厚生年金」の名称と金額が記載されます)

 

保険給付(外国人の方がもらえるもの)

国民年金、厚生年金とも保険給付は、大きく分けると次の3つになります。

・老齢年金(原則、外国人の方が65歳になったときにもらえる年金)

・障害年金(原則、外国人の方が病気やけがが原因で障害のある状態になった

       ときにもらえる年金) 

・遺族年金(原則、外国人の方が亡くなったときにその遺族がもらえる年金)

障害年金や遺族年金は、国民年金、厚生年金の加入期間中に、障害の状態に

なったときや死亡したときには、加入期間の長さにかかわらずもらえる年金ですが、

老齢年金は、原則として、25年以上加入しないともらえない年金です。

 

外国人の方が、老齢年金の受給要件である25年以上の年金加入を満たすことは

難しいことを考慮して、国民年金、厚生年金ともに、以下の脱退一時金制度が

設けられています。

 

平成29年8月1日から、老齢年金の受給要件が加入期間25年以上から

加入期間10年以上に短縮されます。

 

脱退一時金を受け取るための要件

以下の①〜⑦のすべての要件を満たす外国人の方は脱退一時金を受け取ることができます。

①日本国籍を有しない方

②厚生年金に保険料を納付した期間が6か月以上あること

  または国民年金に保険料を納付した期間が6か月以上あること

③老齢年金の受給資格期間を満たしていないこと(加入期間が25年に達していないこと)

④障害年金の受給権を有したことがないこと

⑤年金たる保険給付に相当する給付を行うことを目的とする外国の法令の適用を受ける

  者等でないこと

⑥日本国内に住所を有しないこと

⑦日本国内に住所を有しなくなった日から起算して2年を経過していないこと

 

簡単に言うと、国民年金または厚生年金に6か月以上加入(保険料を納付)していた

外国人の方が、 加入期間が25年未満で、かつ、障害年金をもらったことがない場合、

日本を出国してから2年以内に請求することによってもらえるのが脱退一時金です。

 

脱退一時金をもらってしまうと、これに対応する国民年金または厚生年金には

加入していなかったことになってしまうので、日本と社会保障協定のある以下の

国から派遣等されて日本で働いている外国人の方は注意が必要です。

 

社会保障協定

平成28年10月現在、日本は、ドイツ、アメリカ、ベルギー、フランス、カナダ、

オーストラリア、オランダ、チェコ、スペイン、アイルランド、ブラジル、スイス、

ハンガリー、インドと年金通算の協定を締結しています。 

したがって、これらの国の方が脱退一時金を受け取ると、

その期間を通算することができなくなるので注意が必要です。

 

脱退一時金の支給額

脱退一時金は、上記のとおり6か月以上の年金加入期間が必要であり、

その支給額は、6か月単位で36か月(3年)までは、加入期間に応じて

増えていきますが、それ以後は増えません。

したがって、年金加入期間が3年の外国人の方も9年の外国人の方も

もらえる脱退一時金の額は同じです。

(厚生年金の脱退一時金については、毎月の給料が3年の方と9年の方で

同じと仮定した場合)

 

●国民年金の脱退一時金の支給額は以下のとおりです。

(以下の表は平成28年4月から平成29年3月までの間の保険料を

納付した場合)

 保険料納付済期間  脱退一時金額
 6か月以上12か月未満   48,780円
 12か月以上18か月未満   97,560円
 18か月以上24か月未満  146,340円
 24か月以上30か月未満  195,120円
 30か月以上36か月未満  243,900円
 36か月以上  292,680円

●厚生年金の脱退一時金の支給額は以下のとおりです。

平均標準報酬額x支給率{(保険料率x1/2)x被保険者期間月数に応じた数}

 

たとえば、毎月200,000円の給料(ボーナスはゼロとする)をもらっていた

外国人の方が、3年間、日本で働いて本国に帰国した場合の脱退一時金の額は、

640,000円(※)になります。

(※)厚生年金保険料を支払った最終月が平成28年9月から平成29年8月までの間、

   厚生年金に加入していた期間がすべて平成15年4月以後とした場合の金額。

 

脱退一時金の請求手続き

以下の書類を日本年金機構に送付します。

・脱退一時金請求書(国民年金/厚生年金保険)

・パスポート(旅券)の写し(最後に日本を出国した年月日、氏名、生年月日、

 国籍、署名、在留資格が確認できるページ)

・「銀行名」、「支店名」、「支店の所在地」、「口座番号」及び「請求者本人の口座名義」

 であることが確認できる書類(銀行が発行した証明書等。または、「銀行の口座証明印」

 の欄に銀行の証明を受ける必要があります)

・年金手帳

 

国民年金については、上記の書類を提出することによって、脱退一時金の全額が、

指定の銀行に振り込まれますが、

厚生年金については、脱退一時金の約8割分しか指定の銀行に振り込まれません。

残り約2割分は、所得税および復興特別所得税として源泉徴収されます。

(上記の例では、130,688円(640,000円の約2割)が源泉徴収されることになります)

 

厚生年金に関する所得税の源泉徴収について

所得税法では、所得を利子所得、配当所得、給与所得、事業所得、不動産所得、

譲渡所得、一時所得、雑所得、退職所得、山林所得の10種類に分類しています。

厚生年金の脱退一時金は、このうち退職所得に該当します。

 

そして、退職所得は、以下の計算式で計算されます。

退職所得=(脱退一時金の額 - 退職所得控除額(※))x1/2

(※)400,000円x勤続年数(勤続年数が20年以下の場合)

   最低800,000円なので、勤続年数1年の場合、退職所得控除額は

   400,000円ではなく、800,000円となります。

 

上記の例では、脱退一時金の額は、640,000円、 勤続年数は3年なので、

退職所得=(640,000円 - 400,000円x3)x1/2

となり、マイナスとなるので、退職所得は0円となります。

(この勤務での会社からの退職金はゼロと仮定しています)

 

退職所得が0円なので、これに対する税金(所得税および

復興特別所得税)も0円となります。

したがって、前もって源泉徴収された130,688円は全額還付して

もらうことができます。

 

還付を受けるには、納税管理人を選任し、管轄の税務署に「納税管理人の

届出書」を提出し、納税管理人に退職所得の選択課税による還付申告を

してもらう必要があります。

(日本年金機構から脱退一時金の送金と同時に「脱退一時金支給決定通知書」

が送付されてくるので、これを納税管理人に送付する必要があります)  

 

脱退一時金についてのお問合せはこちら

脱退一時金の申請代理に関する手数料はこちらをご覧ください

 

 ・「脱退一時金支給決定通知書」を受け取った方で、納税管理人の指定をされて

   いない方は、当方で納税管理人になり、脱退一時金から源泉徴収された税金の

   還付申告を致しますので、お問合せ下さい

・脱退一時金が振り込まれたものの、「脱退一時金支給決定通知書」が手元に届いて

  いない方は、手続きを代理致しますのでお問合せ下さい

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             脱退一時金の金額を試算できます 

 以下に当事務所で脱退一時金の手続きをサポートさせて頂いた

お客様の感想をご紹介します。

朴 様(韓国)

私は日本の会社を退社したばかりで、韓国に戻ることになって、さまざまな業務で新川さんに助けてもらった者です。日本年金の脱退一時金の還付業務はもちろん、私の場合、過去購入した日本のマンションを売却することになりましたが、その時にも新川さんに売買における税務関係や契約する時に注意する事項などについてアドバイスしてくれました。また、平成24年分の所得税の還付手続きや、様々な業務をやってくださったお陰で、私は何の問題もなく韓国に来てから日本の税務関係業務をうまく解決することができました。 

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符 様(中国)

  去年帰国する前に急いで新川様のお宅に訪ね、年金及び税金還付の委託を契約しました。最初、複雑な流れがよくわかりませんでしたが、丁寧にご説明いただき不安がなくなりました。今年、すべての年金と所得税の還付金額を無事に振り込まれた。この間、手続きの進捗を詳しくご連絡いただき、不安が一切ありませんでした。去年、法律変更により、住民票除票の手続きまで助かり、その依頼書のEMS送料を半分ご負担いただき非常に感謝しておりました。今年、日本に頑張っている友人にも推薦し、新川様のご活躍を一層に期待しております。

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